2024.01.12   ブログ  
リスクカルチャーを浸透させるために

コーポレートガバナンス・コードの改訂、有価証券報告書への事業等リスクの開示要求、そして環境問題への関心の高まりなどが契機となり、日本企業には攻めの姿勢と守りのバランスを取りながら、コーポレートガバナンスおよびリスクマネジメントのさらなる高度化が求められています。この変化に対応し、多くの企業がリスクマネジメント専門部署の設立に着手しています。しかし、その運用の中で、企業内にリスクカルチャーを浸透させ、それを定着させることは容易ではないと感じられます。

全社的リスクマネジメント体制は業種や規模により異なりますが、通常半年程度で構築されます。しかし、実際に運用を始めると、現場からは「リスクの評価方法」「リスクの洗い出し方」「対応策の立案方法」「モニタリングの進め方」など、様々な質問や意見が寄せられます。これらは、全社的リスクマネジメントを初めて実施する際や実施方法を変更する際の自然な反応であり、積極的な関与を示す好ましい兆候であると思います。

これらの質問には、可能な限り直接対面で議論することを推奨します。これにより、以下のようなメリットがあるためです。
■現場担当者のメリット
 ・第1に質問した問題の解決を図りやすい
 ・質問した問題以外も聞くことができる
 ・リスクマネジメント部門の担当者と話すことで、リスクマネジメント活動について理解できる など
■リスクマネジメント部門担当者のメリット
 ・現場担当者の率直な意見が聞ける
 ・リスクマネジメント活動の理解を深めてもらえる
 ・リスクに関する何かしらの問題が発生した時に相談してもらいやすくなる など
このような活動の結果、現場担当者が「リスクに関する問題が生じた際は、リスクマネジメント部門の担当者に相談すれば、適切な対応をしてもらえる」という認識を持つことが重要です。

全社的リスクマネジメントの目的は、重要なリスクに対する対応策へ経営資源を投入し、事業目標の達成を支援することです。そのためには、リスクマネジメント担当部門が、リスク管理シートの集計や問題点の指摘にとどまらず、現場担当者とのコミュニケーションを図り、リスクマネジメントの目的と重要性を現場担当者と共有し、協力してリスクを低減し、企業価値の向上に向けた活動を推進していくことが必要であると考えます。

このような関係性の構築には時間と労力が必要ですが、その結果として、現場担当者のリスク感度が高まり、「年に数回、リスク管理シートに記載し提出する作業」から「自部門内の業務がうまく回るようにするためのリスク低減活動」への意識変化が期待されます。これにより、現場でのリスク感度の向上が企業全体のリスクカルチャーの浸透につながると考えられます。

この取り組みは企業にとって重要な長期的投資となりますが、その効果は計り知れないほど大きいと考えます。企業全体のリスクマネジメント能力の向上と、より強固なビジネス基盤の構築に繋がると考えます。


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