2024.07.22   ブログ  
リスクマネジメントの難しさ

リスクマネジメントに取り組む中で、クライアントから「リスクマネジメントって難しい」「他社はどうやってるの?」と質問されることがよくあります。この質問に対し、私が感じるリスクマネジメントの難しさは「あいまいさ」ではないかと思っております。

例えば、「顧客データの第三者への漏えい」というリスクを考えてみましょう。このリスクをマネジメントする上で重要なのは、「このリスクがどういった時に発生するのか」、「このリスクが発生した時にどのような影響が出るのか」を具体的に想定することです。例えば、顧客データの漏えいが発生する原因としては「サイバー攻撃によるマルウェアの感染」や「従業員による持ち出し」などが考えられます。また、顧客データの漏えいによる影響は、「信用を失うことによる売上の減少」、「訴訟・罰金」、「漏えいしたシステムの改修費用」など多岐にわたります。このようなシナリオを具体的にイメージできていれば、リスク評価やリスク対応もスムーズに進められるのではないでしょうか。

リスクシナリオの例
「サイバー攻撃によって顧客データが流出し、顧客の信用を失う」というケースを想定します。この場合、リスク評価の際には以下の要素を考慮します:

■影響度の評価
売上への影響: 顧客の信頼を失った結果、売上がどの程度減少するかを見積もります。例えば、顧客離れが20%と想定し、売上減少額を計算します。
損失金額の評価: 顧客データ漏えいに関連する訴訟や罰金の費用を評価します。また、顧客データが漏えいしたシステムの改修費用を試算します。
上記で評価した影響金額と影響度基準を比較し、影響度を総合的に評価します。

■発生頻度の評価
発生頻度の評価は過去の事例やインシデントを基に行います。例えば、過去5年間におけるサイバー攻撃の発生状況や同業他社でのサイバー攻撃被害の状況も参考にします。この評価には、絶対的な正解はありませんが、根拠を持って評価することが重要です。評価内容についてモニタリングし、評価の改善を行う際に評価根拠が明確であれば、やりやすくなります。

■まとめ
リスクが発生する原因や顕在化したときの影響を明確にしておくことで、具体的な対応策を策定し、モニタリングを行うことができます。モニタリングの結果、リスクが十分に低減されていない場合は、想定原因が異なっていた可能性があるため、部門関係者と顕在化したインシデントと発生原因の因果関係を見直し、対応策の修正または追加を行うことで、リスクを低減し、効果的なリスクマネジメントが可能になります。こういった一見遠回りに見えるやり方かもしれませんが、持続可能で堅牢なリスクマネジメント体制を構築するための確実な方法と考えています。

リスクマネジメントを担当する皆さんが、このプロセスを通じてリスクの不確実性を減らし、組織の安定と成長に貢献できることを願っています。


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