2023.10.21   ブログ  
リスクマネジメントの効果とは

リスクマネジメントの効果は、組織にとって非常に多岐にわたり、その中でも最も重要な効果の一つは、組織内のコミュニケーション強化であると考えます。特に最近のビジネススタイルの変化により、現場からの情報が得にくくなっている状況で、リスクマネジメントは現場と経営層のコミュニケーションを円滑にし、適格なリスクに対処するための不可欠なツールとしての役割を果たす可能性があります。

近年、企業の多くで「現場の情報が入りにくくなった」という声をよく耳にします。その背後にはいくつかの理由があると思います。

  • 在宅勤務の増加により、オフィスでの日常的な雑談やコミュニケーションが減少しました。以前はランチや休憩時間に行われる雑談から得られる情報が、在宅勤務中には制限されることがあります。
  • さらに、飲みニケーションや社員旅行などの交流の機会が減少しました。これらのイベントは従業員間の関係構築や情報共有に貢献していましたが、制約が生じています。従業員同士が直接顔を合わせる機会が減少することで、情報の伝達が難しくなっています。
  • さらに、オフィス内のタバコ部屋での雑談風景がなくなりました。これまで喫煙者が気軽にコミュニケーションをとる場所でしたが、喫煙スペースの減少などに伴い、その場の情報共有が難しくなりました。

上記のような職場環境の変化により、情報を収集する手段が少なくなり、現場の声から得られる直感的なリスクの把握が難しくなってきたように感じます。しかし、情報が入手しにくくなったからと言っても、組織はどのリスクが重要であり、どの分野にどれだけの資源を投資すべきかを正確に判断する必要があります。こういった状況の中でリスクマネジメントが情報伝達の役割を果たすことができるのではないでしょうか。

リスクマネジメントは、組織内での情報収集、分析、共有を通じて、リスクを特定・分析・評価し、適切な対策を立案するプロセスです。現場からの情報を集め、経営層に提供することで、組織全体でリスクに対処するための戦略を策定し、適切な資源の配分や投資の判断材料を提供できます。

さらに、リスクマネジメントの他の効果として以下の点が挙げられます。

■事業継続計画(BCP)

予期せぬ事象が発生した場合でも、事前に回避策や対応策を計画することができ、事業の中断を最小限に抑えることが可能となります。

■経営の意思決定のサポート

事前に自社にとって重要なリスクを見極め、そのリスクに対する影響を十分に議論しておくことで、リスクが顕在化したときに戦略的な方向性を明確にし、不確実性を軽減します。

■信頼関係の確立

ESG(環境、社会、ガバナンス)をはじめとする社会的課題に対する具体的な取り組みとその成果は、ステークホルダーからの信頼を得る要因となります。リスクの的確な評価と社会的課題への継続的な対応を通じて、組織はその社会的責任を十分に果たしていると言えます。

■資源の効率的な活用

リスク対策を各部門でバラバラに実施するのではなく、データに基づいたリスク対策により、リソースの最適な配分と投資の適切性を確保できる可能性が高まります。

■サステナブルな成長への貢献

潜在的な損失の回避と潜在的な価値の創造の両方の観点からリスクを管理することは、会社の持続的な成長を支える手段となります。

最後に、企業を取り巻くリスク環境が変化し、VUCAの時代​として認識されています。このような環境変化の中で、不確実性やリスクを効果的に管理し、組織が持続的に成功するための戦略的アプローチとして、リスクマネジメントは不可欠です。組織は、リスクマネジメント体制の確立と共に情報の収集と共有を強化し、リスクカルチャーを浸透させることで、将来の課題に対応し、競争力を維持することが可能となるでしょう。


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