こんにちは。
ERMの実務に携わる中で、多くのお客様からいただくご質問を取り上げるこのシリーズ。第4回は、「KRI(Key Risk Indicator)って何ですか?」というテーマについてご紹介します。
ERMでは一般的に、
• リスクの特定
• リスクの分析・評価
• リスク対応
• モニタリング・改善
というサイクルを継続的に回していくことが重要です。
しかし実際の運用では、リスク対応策を実施し、その進捗を報告したところで活動が一区切りとなってしまい、「本当にリスクが低減しているのか」「対応策は有効に機能しているのか」まで確認できていないケースをよく見受けます。
本来、リスクマネジメントの目的は、事業目標の達成を支援することです。そのためには、リスク対応を実施した後も、リスクの状態やリスク要因の変化を継続的に把握し、必要に応じて改善につなげることが欠かせません。
そこで有効なのが、KRI(Key Risk Indicator:重要リスク指標)です。
KRIは、リスクそのものや、その発生につながる兆候を定量・定性的に把握し、リスクの変化を継続的に監視するための指標です。モニタリングを効果的に行うための重要な手段の一つといえます。
杜氏の仕事に学ぶKRI
以前のブログでもご紹介しましたが、酒蔵の杜氏を例に考えてみましょう。
熟練した杜氏は、発酵中のもろみの状態を毎日細かく確認しています。
• 泡の状態
• 香り
• 発酵温度
• 発酵の進み具合
こうした小さな変化を注意深く観察し、
「予定より発酵が進んでいるな」
「いつもと香りが少し違うな」
といった兆候を感じ取ると、温度管理や工程を調整し、狙いどおりの品質へと導いていきます。
もちろん杜氏は「KRI」という言葉を意識しているわけではありません。しかし、発酵温度や泡の状態、香りの変化を継続的に確認している行動そのものが、「おいしいお酒を造る」という目標を達成するための重要なモニタリングとなっています。
KRIはどう作ればよいのでしょうか?
企業のリスクマネジメントでも考え方は同じです。
リスクを直接測ることは難しい場合が多いため、リスク要因の変化や、コントロールが有効に機能しているかを把握できる指標を設定します。
例えば、一つのリスクに対して一つのKRIだけで十分とは限りません。
• リスク要因を測る指標
• コントロールの実施状況を測る指標
• 結果の変化を測る指標
など、複数のKRIを組み合わせることで、より実態に近いモニタリングが可能になります。
KRIの設定には試行錯誤が必要ですが、既存業務で管理しているデータや日常の管理指標と結び付けることで、無理なく運用できるケースも少なくありません。
「何を見ればリスクの変化に早く気付けるのか」を現場と一緒に考えることは、ERMをより実効性の高いものにする重要な取り組みといえるでしょう。
生成AIも活用できる
最近では、生成AIを活用してKRIの候補を洗い出す企業も増えています。
もちろん、AIが提案した指標をそのまま採用するのではなく、自社のリスク特性や管理実態に照らして検証することが前提です。しかし、アイデア出しや他業界の事例を参考にするという意味では、生成AIは非常に有効な支援ツールになります。
社内で利用が認められた生成AI環境があるのであれば、KRIの検討に活用してみるのも一つの方法ではないでしょうか。