2018年に発行されたリスクマネジメントの国際規格、ISO 31000では、リスクを「目的に対する不確かな影響」と定義しています。この定義によると、リスクにはプラス(好ましい)とマイナス(好ましくない)の両面が存在します。
プラスのリスク、すなわち機会のリスク評価は、単にリスクを避けるのではなく、積極的に管理して有利に活用するための重要なプロセスです。組織はこれを通じて、将来の成長や成功につながる機会を見極め、適切なリソース配分や戦略を立てることができます。
■SWOT分析とリスクマネジメント
リスクマネジメントにおけるSWOT分析の効果的な利用方法は以下の通りです:
①リスクの洗い出し
内部環境の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、外部環境の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を基にリスクを特定します。
②リスク分析・評価
マイナスのリスク同様、プラスのリスクもその実現確率と組織への肯定的影響(利益増加、市場シェア拡大、ブランド価値向上など)を評価します。
③リスク対応策の立案
クロスSWOTを活用して、強みや弱みを機会や脅威に対応させ、具体的な施策を明確にします。
クロスSWOT
外部環境(機会・脅威)と内部環境(強み・弱み)を組み合わせ、それぞれの交点で最適な戦略を検討します。
■リスクマップの活用
プラスとマイナスのリスクは同じリスクマップ上で表現することが可能です。重要なリスクは右上にマッピングされ、これらには資源を集中して対応すべきです。特にプラスのリスクに対しては、迅速に行動を起こし、資金、人材、時間などのリソースを優先的に割り当てることが求められます。
モニタリング
機会を追求する過程で生じうるリスクを管理するための戦略も同時に考える必要があります。また、計画の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて調整を行います。
組織文化の醸成
機会を積極的に捉える文化を組織内に育成します。これには、イノベーションを奨励し、新しいアイデアや提案を積極的に受け入れる風土を作ることが含まれます。
■まとめ
リスクマネジメントにはネガティブなイメージがありますが、チャンスを捉えることにも焦点を当てることで、その効果を現場に浸透させることができます。プラスのリスクを効果的に管理することにより、組織は潜在的な機会を最大限に活用し、競争優位性を築くことができます。これは、リスクをただ避けるのではなく、積極的に利用するための戦略的アプローチとして考えられます。