業務日誌

違い(変化)に気づく力

事業活動における「リスク」とは、事業目標の達成を妨げるあらゆる要因を言います。例えば、プロジェクトで予定通りに作業が進まず納期が遅れるかもしれない。あるいは、商品やサービスの売上が突然落ち込む可能性もあります。こうしたリスクの兆候をいち早く発見し、適切に対処することが、安定的な事業継続の鍵を握ると考えます。
リスクマネジメントというと、何か大げさに聞こえるかもしれません。しかし、その本質はシンプルです。「いつもと違う様子」にいかに早く気づけるか。つまり、違いを見逃さないことが重要なのです。
例えば、プロジェクトのメンバーが急に元気がなかったり、普段と違った言動をすることがあります。理由はさまざまあると思いますが、プロジェクト内の人間関係のトラブルかもしれませんし、プライベートでの問題かもしれません。その変化に気づかないまま放置すれば、大きなトラブルに発展する可能性があります。本人のモチベーションが低下すればタスクの遅延や品質の低下を引き起こすかもしれませんし、メンバー間のコミュニケーションに問題が生じれば、プロジェクト全体の進捗に影響が出るかもしれません。
ここで大切なのは、違和感を察知したら「どうしたの?」と声をかけることではないでしょうか。もしメンバーが「実は家族のことで…」と話してくれたら、その状況に応じたフォローが可能になります。プロジェクトリーダーやマネージャーには、業務の進捗を管理するだけでなく、メンバーに気を配る役割も求められます。普段から様子を見守っていれば、その変化にいち早く気が付き、適切な対応ができると考えます。
もう一つの例として、営業部長の立場で考えてみましょう。先月あたりから商品の売上が下がり始めたとします。その変化に気づいたとき、部下に対してどのような指示を出すでしょうか。「最近売上が落ちてるぞ!もっと頑張れ!」という言葉は、一見すると熱意のある言葉のように聞こえますが、ただの精神論に終始してしまうと根本的な解決にはなりません。
一方で、「なぜ売上が落ちているのだろう?」と市場環境の変化や部下の意見に目を向ける姿勢を持てばどうでしょうか。商圏内に新たな競合が参入したのか、あるいは競合他社が値下げ戦略を打ち出しているのか。価格だけでなく、顧客ニーズの変化やトレンドの影響など、原因は多岐にわたります。原因を突き止めることができれば、価格戦略の見直しや新たな販売チャネルの検討など、具体的な対策を打つことができます。その結果、売上減少のリスクに対して適切なアクションが取れるのです。
このように、リスクマネジメントにおいて重要なのは、「普段から変化に気を配り、何かがおかしいと感じたときに、その原因を掘り下げる」という姿勢です。すべての変化に等しく対応することは難しいかもしれませんが、まずは“普段の状態”をしっかり把握することが大切と考えています。少しでも違いを感じたら、まずは声をかけ、その背景にある原因を探る。こうした小さな気づきが、大きなリスクを防ぐ第一歩となります。
組織全体として、日常業務の中でリスクをいかに早期に察知し、分析し、共有し、対応するかが重要です。プロジェクト管理から人材マネジメント、そして市場の動向把握に至るまで、「違いを見逃さない」ための仕組みづくりが不可欠だと考えます。
リスクとは“怖いもの”というより、事業目標を達成するために乗り越えるべきハードルです。その存在に気づき、的確に準備することで、むしろ組織の強みを磨く機会にもなります。「最近、ちょっとおかしいかも?」と感じたときは、その違いに注意を向けてみてください。ほんの小さなサインを見逃さないことが、ビジネスを前進させるきっかけになるかもしれません。
安定的な事業継続と企業価値向上のために、リスクマネジメントという視点を持ち、日々の業務で「違いを見逃さない」ことを意識してみてはいかがでしょうか。

関連記事

2025年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
TOP